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日記文学とは、散文を主な媒体としてみずからの生の軌跡や心情を表現し、作品化したものである。『土佐日記』と『かげらふ日記』が生まれるまでは、男は漢詩文か和歌、女子は和歌によってしか自己を表現しえなかった環境のなかで、散文による「日記」という方法が試みられたのは画期的なことであった。次いでその方法は、心の内奥までをさらけだして自己のたどってきた生の軌跡を描くという自伝的回想録的な散文へと発展を遂げる。このような文学は、世界文学史の流れのなかでも特異な位置を占めるものであり、またそれが、世界に先駆けて女性によって始められたことは、日本文学の核心的な部分に触れるものだともいえよう。
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